蝙蝠山に吹く風は、

映画・ドラマ・アニメ・本の感想と福山市を中心にラーメン店巡り中

広告

手塚治虫 「奇子」 感想

 

 1972年から1973年にかけてビックコミックで連載された手塚治虫の戦後のゴチャゴチャとした暗い世の中で没落していく天外家とその箱入り娘(物理)の奇子の話である。

1949年に発生した未だ謎が残る戦後国鉄三大事件をモデルにした話がきっかけにして話が進んでいく。今では遙か過去の事件に思えるが、連載された1972年には生々しいちょっと前に起こった事件として見えたに違いない。

農地改革で衰退していく名家というのもそこら中で見られた光景だろう。

この漫画の主人公は、天外仁朗とタイトルにもなっている天外寄子である。天外仁朗が殺人事件に関わった証拠を隠滅する所を天外寄子が目撃してしまい。それを警察に言わないようにするために天外寄子は地下室に閉じ込められてしまう。

1巻は時代の空気を説明するような話が多くあまり面白く無かったが、2巻から面白くなっていくので我慢して2巻まで読んでもらいたいと思う。

4歳の時に寄子は地下に閉じ込められてしまったため彼女の時は4歳で止まってしまっている訳である。そんな彼女の精神は4歳で止まったまま体だけが成長していく様がとても艶めかしい。土蔵が強制代執行で壊されてからは、本当に箱の中で暮らすようになる。ビックコミックで連載されていたわけだからそのあたりの表現は自由だったのだろう。

手塚治虫作品はブラックジャックしか読んだことがなかったが、こういう昼ドラのようなドロドロとした暗い作品も書けたことに驚きを感じた。