蝙蝠山に吹く風は、

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浅田次郎「シェエラザード 上・下」感想

 

シェエラザード(上) (講談社文庫)

シェエラザード(上) (講談社文庫)

 

 

シェエラザード(下) (講談社文庫)

シェエラザード(下) (講談社文庫)

 

この小説のドラマをNHKで見たことが記憶にありました。ドラマを見たあとすぐに単行本を買ったのですが、なかなか読む気になれなくてずっとしまいこんでしまっていました。調べるとドラマの放送は2004年7月31日だったそうです。ざっと13年近く経って読もうという決心がついたことになります。豪華客船が雷撃によって一瞬で沈み、乗員乗客2300人のうち一人しか生き残らなかった話ですからね。そういう話を読むためには元気な時じゃないとしんどいですから……

話は、現代パートと過去パートの交互で進みます。現代は銀行を辞め、ヤクザの企業舎弟と成り下がった男の元に宋英明という台湾人が弥勒丸を引き揚げたいと持ちかける所から始まります。そしてその弥勒丸には金塊が積まれていたということも伝えられます。

過去は、弥勒丸で何が起こっていたのかという話です。

決して攻撃されるはずのない緑十字船が、なぜ沈むことになったのか? そしてその船を引き揚げようとするこの台湾人は何者なのか? なぜ日本人の手で引き揚げさせようとするのか? という謎を追っていくことで話は進んでいきます。

この弥勒丸、建造されたばかりの日本が世界に誇る、ものすごい豪華客船であることが繰り返し描かれています。なので元ネタは緑十字船阿波丸ですが、弥勒丸はどちらかと言うと空母隼鷹となった橿原丸に近いですね。阿波丸は豪州航路向けで橿原丸は弥勒丸と同じサンフランシスコ航路向けだったようですし、実際にサンフランシスコには行けなかったことも共通しています。そんな華麗な彼女である弥勒丸は、戦争によって豪華客船として一度も使われることはなく赤十字船として太平洋の各地を駆けずり回ります。そして大戦末期、緑十字に塗替えられ連合国捕虜への救援物資を運ぶ使命を与えられます。そして近視眼的な軍人たちのせいで沈む運命になる。泣かせる話ですね……

タイトルのシェエラザードは、リムスキー=コルサコフの交響組曲シェヘラザードからです。そしてそのシェヘラザードは、千夜一夜物語に登場する王妃の名前です。結婚して翌朝殺害する王の悪行を止めるために一夜に一つ話をしていくことによって殺害を回避することで有名な話です。弥勒丸は、回避できませんでしたけれども……